特別講演

IoTからIoSへ──社会に溶け込むロボット

講師: 坂村健(INIAD東洋大学情報連携学部学部長)
日時: 2017年9月13日(水)16:15-17:30
会場: 東洋大学川越キャンパス7号館721教室

講演概要:

 私が進めているTRONプロジェクトの基本哲学は「オープン」である.そしてTRONはIoT (Internet of Things) と呼ばれる技術の実現を目指したプロジェクトである.ここから生まれたTRON OSはオープン,つまり全ての技術情報はOSのソースコード到るまで公開され,それにより世界で最も多く使われている機器組込みのリアルタイムOSになった.
 IoTは,現実の環境に多数のコンピュータを埋め込み,それらをネットワークすることによって現実の状況を総体的に意識し,それにより最適な制御・サービスを現実環境にフィードバックするというコンセプトである.そしてこれこそ,私が進めているTRONプロジェクトが1984年の発足当時から目指してきたゴールでもある.現実の状況を反映して社会活動や生活の「スマート化」を実現する基盤ができる.また機器に使うことで故障の事前予知,設備運転の効率化による省エネなども可能となる.
 多数のセンサーを付けて全体最適制御や故障予測をする応用はすでに実現され,成果を上げている.ただしこれらは「閉じたIoT」と呼ばれるものである.範囲が特定の工場の中だけに閉じているからだ.もちろんこういったものも重要だが,最初に述べたTRONプロジェクトの基本哲学のように「オープン」が,これからのIoTの課題である.身の回りにある「Things」による現実世界へのサービスを,メーカーや応用の枠組みを越えてオープンなInternet経由で検索し連携させられるようになれば,観光案内,障碍者支援,ロボットの誘導,災害対策など様々な場面で有効であろうと思われる.
 一方,IoTをオープンにという展開と別に「Things」の枠もまた外すべきという考え方が出てきている.例えば,先ごろUber社はサンフランシスコで自動運転タクシーの実験を行った.この期間中Uberアプリで車を呼ぶと,運がいい(悪い?)と人間のドライバーの代わりに,ロボットタクシーが来たという.このことが示しているのは,ネットの先が人間かロボットかではなく「ネット経由で移動というサービスを呼び出せる」ことこそが利用者からみたUberの本質だということである.サービス提供者の枠組みを越えてオープンなInternet経由で「その時,その場,その人」が必要とするサービスを検索し,連携させられるような基盤を構築する──このような概念を私はIoTならぬIoS (Internet of Services) と呼んでいる.
 本講演ではこのIoSの前段階として考えるべきIoTの「オープン性」の意義,またその実現までの課題と影響.さらにIoSにより社会がどう変わるか.その社会の中での「ロボット」の意味といったものについて述べたい.